不正引き出しとは
金融機関にある取引口座とチャージ対象(キャッシュレス手段等)の持ち主(管理者)が異なり、取引口座の資金が無断で移動させられること
今回だと例えば、
キャッシュレス手段 | 取引口座 | 備考 |
D払い(他人) | ゆうちょ(自分) | ドコモ口座 |
LINEペイ(他人) | ゆうちょ(自分) |
#上の表の「他人」と「自分」が逆になると、攻撃者そのものか、犯罪に巻き込まれているか、になるだろう
①2段階認証はひとつでよい、という誤解
2段階認証(2要素認証ともいう)は英語では2-factor-authenticationとなるが、3-factorや4-factorの方が突破されにくい。ドアについている鍵の数が1つより2つ、2つより3つの方が開けにくいのと同じ。
ちなみに、昔NYではドアに数個鍵を掛けると言われ映画やドラマでもそのような場面が出てくるが、「8つ鍵を付けると狙われない」としていたと記憶する。(そりゃそうだろう)
2段階認証として設定できるのは、(口座番号や暗証番号は当然のこととして、)他にはだいたい
- ワンタイムパスワード
- 第2暗証
- 生体認証
- 合言葉
- マイナンバー
位だが、どれも抜け穴がある。
#最悪、例えば家族なら全て突破できる場合がありえる。一卵性双生児なら生体認証も??
②xx銀行、xxペイ、xxサービスのどれかひとつで2段階認証を導入しているから安心、という誤解
ゆうちょとLINEペイを例にすると、
- ゆうちょは2段階認証していない
- LINEペイは2段階認証は(オプション)。住所や名前などは実在のものでなくともOK
なので、他人のLINEペイから2段階認証していないゆうちょ口座への紐づけが可能になっている。ゆうちょで2段階認証等の対策がとられていれば、かなり防げるものだが、それがない
③攻撃者の前提は把握可能という誤解
普通はこうするだろう、と攻撃者の動きを想像すると、痛い目を見る。被害者が気づくまで、普通では考えられないことをやっているはず。
また、不正被害が世の中に知られたので、無くなるのも時間の問題だろう、とはいかない。被害が気づかないところでは口座の資金が枯渇(または借り入れ額が上限に達する)迄続く。
どこに気を付ければいいか?
預金口座をもつ金融系(銀行、ゆうちょ)が紐付けサービスを始めたら、リスクがある。口座の取引に異常がないか確認する。メールが来るものならこまめにチェックする。
金融機関からキャッシュレスサービスとの連携を開始する通知があるか。封書でもハガキでもメールでもいいので。契約者全員にアナウンスがあるか。
また、取引口座の取引を逐一メールやハガキで通知するシステムになっているか。これが徹底されていれば、口座を確認するためATMや金融機関にわざわざ出向く手間が省ける。
LINEペイの銀行口座登録の例(2020年9月時点)
登録方法例(LINEペイ)
- 1口座番号・PWなどの情報を
- 2銀行選択して必要な情報を入力
- 3銀行のWebサイトで必要な情報を入力
(例)2020年9月時点のLINEペイの銀行口座登録
金融機関 | 口座登録のため準備するもの(口座情報は省略) | 備考 |
ゆうちょ | なし | |
三菱UFJ(MUFG) | ワンタイムパスワード(OTP) | OTPはアプリも可能 |
三井住友(SMBC) | ワンタイムパスワード(OTP) | OTPはアプリも可能 |
みずほ銀行 | メアド(普通預金口座)合言葉、第2暗証番号(みずほダイレクト) | 偽サイトで入力、もしくは口座情報を売られていないか |
楽天銀行 | ワンタイムキー | |
ジャパンネット銀行 | トークン(OTP) | |
住信SBIネット銀行 | アプリ(スマート認証)(SMS認証) | 生体認証、登録電話番号が変更できなければOK |
その他 | 省略 |
それぞれの対応を比較すれば、その脆弱性は一目で分かる。一方にあって他にない認証情報の存在理由を検討していれば済むこと。
例えば、引き出し金額上限が最初1円などになっていて、窓口でしかその上限額が引き上げられないなど、コストのかかるものがないと、上記のような認証情報の差は説明できないはず。
ゆうちょの登録
ゆうちょには2段階認証がない。報道ではキャッシュレス業者に2段階認証の導入をお願いしているらしいが、ゆうちょ側にも必須だ。取引に関するものなら、キャッシュレスへのチャージを含めゆうちょ側でも2段階認証が必要。



(口座契約者と同一かの意味で)本当に本人のキャッシュレスアカウントから取引口座への登録要請がきているのか、どうやって確認するのだろう。金融機関の知らないところで認証されたものを、自分で確認しないでどうやって認証するのだろう。
ドコモ口座とdアカウント
ドコモ口座もdアカウント経由で銀行口座と紐づけるが、dアカウント自体には2段階認証が導入されている(必須でないようだが)。ただし、そのことと銀行口座登録時に銀行側に2段階認証がなくていいとは決してならない。紐づけようとしているdアカウント(ドコモ口座)が銀行口座の本人のアカウントとはかぎらないから、dアカウントの方が2段階認証で守られていても全く意味がない。守るべきは銀行口座の方である。
キャッシュレス業者の個人認証は金融機関の個人認証に比べ極端に脆弱だ。プリペイド式で認証が不要だったり、セキュリティの厳しいクレジットカードと紐づけることでチャージ機能を付与してきた。銀行のように免許証を送付したり窓口で手続きということもない。逆に銀行口座へアクセスできることで個人認証の論拠となっている場合もある(Auペイなど)。
まとめ
取引をメールで知らせない金融機関はあぶない。金融機関が損する訳ではないが、口座の契約者が被害が認識できない可能性がある。連携先がメールするからOKで、はない(連携先の登録メールアドレスと金融機関の登録メールアドレスが違っている場合、確認できない)
金融機関が、キャッシュレスなど他の決済サービスと連携している時点であぶない。簡単に連携できるほどあぶない。連携が面倒なほど危険度は減る。
取り扱い額(引き出し金額)の上限を設定できないところはあぶない。特に契約時に「上限なし」など論外(通常は100万円や49万円などが設定されている)。
主たる金融機関が、不正引き出しがないか確認してくれと、口座契約者に依頼しているが、不正かどうかに関係なく、自宅宛てもしくは登録メールアドレス宛てに、取引があったことを通知すべきだ。
認証の厳しい金融機関とあまあまのサービス業者の連携では、常に認証の厳しい金融機関が取引口座を守る対策を取るべきだ。